計画研究
本研究の目標は、ヒトの細胞において、染色体および紡錘体を構成する分子群がM期キナーゼによってどのよう制御されているのかを明確にすることにある。平成22年度は、分裂期細胞の最大の特徴である染色体の構築が、一連のM期キナーゼの活性によってどのように誘導されるのかを検討した。分裂期の進入は、分裂期サイクリン依存性キナーゼ(Cdk1)の活性化によってもたらされることが古くから知られているものの、Cdk1がどのようにして分裂期に特徴的な細胞内構造の変化を導くのかはほとんど分かっていない。本研究において、われわれは、Cdk1がコンデンシンII複合体のなかのCAP-D3というタンパク質をリン酸化することが、染色体凝縮を開始させるスイッチであることを突き止めた。この特定のリン酸化修飾はCAP-D3のThr1415である。この部位のリン酸化によって、Poloキナーゼ(Plk1)というまた別の分裂期キナーゼを染色体に呼び込み、さらにこのPlklがコンデンシンIIの広範囲のリン酸化を促進して、染色体の凝縮を進めるというメカニズムを見出した。更に、このスイッチが入らない細胞を観察すると、前期における染色体の凝縮が進まないうえに、螺旋状に渦巻いた異常な染色体をつくり出してしまい、ひいては分配の失敗を導いた。これらの結果によって、細胞がどのようにして染色体の形成を促すかについての分子背景が説明できるようになった。加えて、前期における染色体凝縮の重要性を示唆している成果と位置づけられた(Abe et al., 2011)。
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