計画研究
細胞の増殖において、ゲノムの本体である「染色体」を過不足なく継承することは、生命体維持の基本であり、その破綻は細胞の生存を危うくし、染色体不安定性を伴う疾患の細胞病態と緊密な関係にある。本研究の目的とするところは、「染色体の構築」と「動原体の機能」について、M期キナーゼのはたらきを追究することによって、その分子機構を明らかにすることである。平成23年度は、Aurora BとPolo-like kinase 1(Plk1)という普遍的なM期キナーゼが、染色体の形成において、正反対のはたらきを持つことを見出した。つまり、Aurora Bはクロマチンの凝縮を促進するのに対し、Plk1は過凝縮しないように、むしろ脱凝縮を促進しているという側面が見えた。その分子背景を調べるために、Plk1の結合タンパク質をクロマチン画分より探査したところ、染色体の軸索構造を構成する4つの分子あるいは複合体を同定した。興味深いことに、これらの分子群は、Plk1のみならず、Aurora Bの基質でもあることが判明し、これらのキナーゼによる選択的リン酸化修飾によって、染色体軸索の構造が制御されていると推察される。さらに、動原体においても、Aurora BとPlk1は、それぞれ微小管結合の安定化と不安定化というこれもまた反対の機能を有していることを見出した。総じて、M期分裂装置の構築と機能は、Aurora BとPlk1という2つのM期キナーゼの協調に基づいて制御されているという作業仮説が導き出された。
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Genes & Dev
巻: 25 ページ: 863-874
EMBO J
巻: 30 ページ: 2233-2245
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http://www.jfcr.or.jp/tci/exppathol/index.html