1.DNA障害チェックポイントにおけるChk1のシグナル伝達機構の解明:DNA障害チェックポイントの際にATRからChk1を介してCdc25Aに至るシグナル伝達経路が重要であることは知られているが、その詳細な分子機構は不明であった。我々は、ATRによるChk1のリン酸化修飾をきっかけに、Chk1のSer296の自己リン酸化反応が引き起こされることを見出した。また、Ser296の自己リン酸化反応依存性に、14-3-3ガンマを介して、Chk1がCdc25Aと結合することを明らかにした。この3者複合体の形成をきっかけに、Chk1がCdc25AのSer76をリン酸化することで、Cdc25Aが分解し、細胞周期が停止するというシグナル伝達経路を初めて明らかにした。 2.増殖細胞におけるトリコプレインの機能の解析:我々は、トリコプレインが分化した細胞や組織ではケラチンフィラメントおよびデスモゾームに局在していることを報告してきたが、トリコプレインが、増殖期の細胞において、中心小体の遠位/中央部に局在することを新たに見出した。また、トリコプレインは、Odf2、ナイニンと結合し、中心体での微小管のアンカリングを制御していることを明らかにした。つまり、トリコプレインは、増殖休止期には細胞接着装置や細胞骨格分子に局在し、増殖期には、(細胞増殖に必要と考えられる)中心体への微小管のアンカリングを制御することで、細胞増殖と組織構築の両面を制御していることが明らかになった。
|