計画研究
1)ケラチン結合蛋白質トリコプレインの中心体における機能トリコプレインが、ninein、Odf2との結合によって、微小管の母中心小体のappendagesへのアンカリングに関与していることを明らかにした(J.Cell Sci.,2011)。また、トリコプレインが分裂期キナーゼの一つであるAurora-Aと結合し、Aurora-Aを分裂期(M期)ではなくG1期特異的に活性化していることを解明した(J.Cell Biol.,2012)。トリコプレインがG1期特異的にAurora-Aを中心小体(基底小体)で活性化することによって、一次シリアの形成を抑制し、G1期の進行に不可欠な役割を果たしていることを明らかにした(J.Cell Biol.,2012)。2)チェックポイントキナーゼ1(Chk1)の新規機能Chk1が、中心体ではなく核に局在することで細胞周期の進行(特に、G2期から分裂期の移行)を負に制御していることを明らかにした(J. Cell Sci.,2011)。また、Chk1が、MAPキナーゼカスケードの下流に位置するp90RSKによって、そのセリン280がリン酸化され、核内に集積することを解明した(Mol.Biol.Cell,2012)。このChk1の核内集積により、G1期進行の際のチェックポイント応答を円滑していることを明らかにした(Mol.Biol.Cell,2012)。これら2つの研究業績は、これまでよくわかっていなかった細胞分裂休止期(GO期)から増殖サイクルのG1期への移行のメカニズムを明らかにしたものといえる。
1: 当初の計画以上に進展している
計画当初は、Chk1が機能しているG2/M期チェックポイントやS期チェックポイントを想定し、研究を進め、上記のチェックポイントにおけるChk1の自己リン酸化修飾の重要性などを明らかにした。本年度は、計画当初予定していた研究を遂行する中で、計画当初に予定していなかったG1期進行における新規制御機構を明らかにするという研究成果を得ることができたため、このように評価した。
細胞周期研究における大きな残された問題として、中心体と核のサイクルの一致がどのようになされているかが残されている。特に、高等生物にしか存在しない一次絨毛と細胞周期の関係については、まだ、よくわかっていないことが多い。今後は、我々が見出したG1期進行に絡む分子群の結合蛋白質やキナーゼの場合はその生理的基質を探ることで、上記の問題を解決していきたいと考えている。
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http://www.pref.aichi.jp/cancer-center/ri/01bumon/08hatsugan_seigyo/index.html