研究概要 |
哺乳類の心筋細胞は胎児期は活発に増殖するが、生後に増殖停止してからその後、二度と増殖しない。その機構を探るため、胎児期から生後にかけて減少する細胞周期調節蛋白質、サイクリンD1を任意の時期に心筋細胞で発現誘導できるマウスなどを用いて研究を進めてきた。本年度では、以下を明らかにした。(1)サイクリンD1発現誘導によりCDK4活性は持続するにも関わらず、再進行した細胞周期は途中で停止する。(2)その原因はCDK2の蛋白質量の低下に先駆けておこる同酵素の活性阻害である。(3)一方、生後、まもなく起こる心筋細胞の増殖停止機構を探ったところ、生後10日で細胞周期のG1,S期のサイクリンとCDK量が極度に低下し、その時期は増殖停止期に一致した。(4)しかし、それに先駆けてCDK2の活性阻害が認められた。これらの成果は、成体心筋細胞の増殖停止機構の一因がCDK2の活性阻害にあること、そして、それは生後、まもなく起こり、増殖停止そのものと共通の原因であることを強く示唆した。これらの研究に加え、哺乳類とは異なり、心筋細胞が再増殖し、心臓再生が可能であるイモリに注目し、その増殖再開因子を探索した。まず、この目的のため、組織培養系の構築に成功し、さらにこの系を用いて同因子を探索したところ、有力な候補を発見した。今後、これらマウスとイモリの解析系を相互比較しながら発展させ、心筋細胞の増殖停止機構を明らかにしていきたい。
|