計画研究
哺乳類の心筋細胞は、胎児期には活発に増殖するが、生後に増殖停止してからその後、二度と増殖しない。その機構を探るため、胎児期から生後にかけて減少する細胞周期調節蛋白質、サイクリンD1を任意の時期に心筋細胞で発現誘導できるマウスなどを用いて研究を進めてきた。本年度では、以下を明らかにした。(1)サイクリンD1発現誘導により40%以上の細胞が細胞周期に進入する。(2)しかし、そのほぼ全てがG2期で停止、また、一部は多倍化する。(3)CDK活性阻害がその原因と考えられ、CDK阻害蛋白質の発現を検討したところ、p21の発現上昇が認められた。(4)さらにp21は主要サイクリン-CDK複合体と結合していた。(5)一方、これとは別にCDKの活性化がその修飾制御で阻害されている可能性も考えられた。これらの結果から、成体心筋細胞の増殖停止機構の原因としてp21もしくは修飾制御によるCDKの活性阻害にあることが予想され、p21のKOマウスなどで検証中である。これらの研究に加え、哺乳類とは異なり、心筋細胞が再増殖し、心臓再生が可能であるイモリに注目し、その心臓再生時の細胞周期因子の発現パターンを解析した。このため、ほぼ全てが未同定であったイモリ細胞周期因子遺伝子をクローニングし、発現を調査した。その結果、哺乳類とは異なり、再生により細胞周期因子の発現増加を確認できた。また、イモリで分子遺伝学を可能とするため、成熟が速いイベリヤトゲイモリを導入した。今後、これらマウスとイモリの解析系を相互比較しながら発展させ、心筋細胞の増殖停止機構を明らかにしていきたい。
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Development
巻: 138 ページ: 1771-1782
doi:10.1242/dev.059295
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