研究概要 |
細胞の中では多くの分子が単独ではなくダイナミックに動き回り、離合集散しながら、細胞機能を担っている。タンパク質の凝集体と考えられていた構造体も実は細胞質内にある多くの分散しているタンパク質と交換していることが分かってきた。このような凝集体の構造やサイズは様々であり, こうした構造やサイズを明らかにしなければ, タンパク質の凝集体と深い関係があるシャペロン機能や品質管理のメカニズムと生物学的意義の解明は達成されないと考える。これまでの研究で申請者は細胞膜中でのタンパク質の動態を高感度に検出する全反射型蛍光相関分光法(Total Internal Reflection Fluorescence Correlation Spectroscopy、TIR-FCS)を開発してきた。今年度はこれらの方法をさらに発展し多点同時測定可能なシステムの構築を行い, 細胞膜や細胞内でのタンパク質の凝集や局在の変化をリアルタイムで検出する方法を開発した。凝集体形成に関してはタンパク質同士の距離が溶液中に存在するときよりも距離が短くなることが予想されたのでFCCSや通常のFRET測定の精度を高めるために蛍光寿命測定も取り入れた。 具体的な主な成果はまず, TIR-FCSの安定化と7点同時測定が可能な多点化(Multipoint-TIR-FCS)を行い, 生体膜結合性蛋白質の動態の検出を行った。次に, 蛍光寿命測定の標準化のために, アミノ酸2個から20個にわたるリンカーを有するGFP2量体を作成し, その一分子あたりの蛍光強度と蛍光寿命の関係を明らかにした。M-TIR-FCSでは細胞膜上のコンパートメントの存在を確認することができた。生細胞上での生態膜蛋白質の動態解析に寄与するものと期待される。
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