研究概要 |
細胞の中では細胞の機能を支える分子が活発に動き回り,相互作用をしながらこれらの構造を支え,細胞の機能を発現している。タンパク質の凝集体と考えられていた構造体もある条件下では脱凝集を行うなど,細胞質内にある多くの分散しているタンパク質と交換していることが分かってきた。その過程を調べるためには凝集体の構造やサイズを明らかにしなければ,凝集体の品質管理のメカニズムと生物学的意義の解明は達成されないと考える。本年度も,このような凝集体や複合体の形成をいち早く検出するために元となる分子の挙動を細胞内で高感度に検出するシステムの構築を目指した。方法として蛍光相関法を用いた細胞質における分子間相互作用解析と全反射光学系を利用した生体膜におけるタンパク質の凝集反応の検出を行った。また具体的には牛海綿脳症(BSE)を引き起こす,プリオンタンパク質(PrP)等の凝集初期におけるミクロな凝集体の検出を目指した。このミクロな凝集体は生体機能を阻害する可能性が注目されている。我々は希薄なSDS濃度条件下におけるモデル実験系を確立して,凝集初期,例えば,3量体から10量体程度までの凝集過程を詳細に検出・定量する方法として,一分子あたりの蛍光強度と,立体構造を認識する抗体を用いて,評価した。その結果,3量体を細小ユニットとして,6量体,9量体が形成されることがわかった。また,そのときにプリオンタンパク質のC末ならびにN末領域とも立体構造変化があることが分かった。これらの結果からプリオンタンパク質の新規の凝集体モデルを提唱した。
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