研究概要 |
生きた細胞内ではタンパク質は動的に相互作用を繰り返し機能している。このようなタンパク質の機能を明らかにするためには生細胞内での複合体や凝集体の相互作用の定量的な把握が重要であること必要である。本研究はこのような凝集体や複合体の形成をいち早く検出し分子の挙動を細胞内で高感度に検出するシステムの構築を行うことを目的としている。これまで全反射型蛍光相関装置の高感度化と生細胞内におけるタンパク質凝集検出システムの構築を行い,生細胞内における新たな定量的解析法を確立しタンパク質社会研究に貢献する。 そのため本年は,酵母プリオンを凝集体タンパク質との相互作用の研究対象とした。特に,シャペロン系タンパク質の相互作用解析として出芽酵母のHsp104を対象とした。Hsp104はSup35タンパク質の凝集・脱凝集を司る因子として知られているが,実際の酵母細胞内での挙動は明らかではない。そこで,まず蛍光相互相関法を用いてSup35・Hsp104タンパク質の相互作用測定条件を明らかにした。次にHsp104のATPase活性を阻害するグアニジン塩酸塩(GdnHCl)を細胞抽出液に添加してFCCS測定を行った。その結果、濃度依存的に相互相関関数が消失することが分かった。100%相互作用していると考えられるモデルタンパク質の値で規格化すると、Sup35が凝集する[PSI+]では約半数のSup35可溶性オリゴマーがHsp104と相互作用しているということが分かった。このことは、Hsp104は脱凝集機構に必要なATPase活性を用いて可溶性Sup35オリゴマーと結合していることが考えられる。次に,溶液の中のATP濃度を変化させたところ,10mMATPでは相互作用が消失し,1mMATPでは相互作用が検出された。一見矛盾する結果のようであるが,ATP分解活性が結合ではなく,解離に関係することを示唆している結果と考えている。
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