(1)プリオンを含むタンパク質の構造多形の生物学的意義の解明 近年のタンパク質科学の進展により、タンパク質の中には本来の立体構造以外にもアミロイドやプリオンのような分子間βシートよりなる秩序をもった凝集状態に構造変換するものがあることがわかってきた。また、さらには、そもそも特定の立体構造を持たない「天然変性状態」も知られるようになってきている。このようなタンパク質の「構造多形」がタンパク質の機能発現や喪失に重要なことがわかってきているが、その形成のメカニズムや細胞内タンパク質社会でのはたらきなどはほとんどわかっていない。19年度は、酵母のプリオンをモデルとして、in vitroにて構造を持たない状態からアミロイドになるときの構造変換について1分子イメージングの結果を元に新しい知見を得た。 (2)構成的アプローチによるタンパク質機能発現システムの再構築 タンパク質が機能を発現するには、リボソームを中心とした翻訳系からポリペプチドが合成されて、フォールディングする必要がある。このプロセスを理解するためには翻訳に共役してタンパク質のフォールディングを調べる必要があるが、従来の無細胞タンパク質合成系は細胞抽出液という複雑系を用いるために、作用機構の解明には限界がある。本研究では、必須因子のみから構成された無細胞タンパク質合成系(PUREシステム)を基盤技術として、上記の限界を乗り越えて、タンパク質がいかに機能発現を達成しているのかを分子レベルで解明することを目的とする。19年度はPUREシステムを用いて大腸菌の全蛋白質を発現させ、その凝集のなりやすさを評価した。
|