研究概要 |
1.βバレル膜タンパク質の外膜への組込みにおけるTom7の役割の解明 Tom40などβバレル膜タンパク質のアセンブリーを担うTOB複合体のサブユニットMdm10は,TOB複合体に入った新生Tom40の解離を特異的に促進する。TOM40複合体のサブユニットTom7は一部がMdm10と会合し,Mdm10のTOB複合体への結合を阻害する働きがあることを見出した。Tom7はTOM40複合体の他のサブユニットが不足している間は,新規合成されたTom40がTOB複合体からMdm10によって放出されるのを防ぎ,TOB複合体に留める働きがあるものと考えられた。 2.プレ配列中にミトコンドリア行きシグナルが二つあることの意義を解明 ミトコンドリアタンパク質前駆体の長いプレ配列には,ミトコンドリア受容体Tom20が認識するミトコンドリア行きシグナルを二つ持つものがあることを発見した。一番目のシグナルがTom20に認識されることで前駆体はミトコンドリアに入ることができ,二番目のシグナルがTom20に認識されると,前駆体の外膜通過の効率が上昇することを見出した。 3.分泌タンパク質とミトコンドリアタンパク質におけるNSDの役割の解明 何らかの理由でmRNA中の終止コドンが失われると,タンパク合成が途中で停止したリボソームが生じ,細胞全般の翻訳を阻害する。このため終止コドンのないmRNA (NS-mRNA)を分解し,リボソームを解離させるシステムが存在する。分泌タンパク質やミトコンドリアのタンパク質の場合はNS-mRNAが生じると膜透過装置をふさいでしまうため,同様のリボソーム解離システムが重要であることを見出した。
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