研究概要 |
1.動作中のTOM40複合体のスナップショット 部位特異的光架橋法により,ミトコンドリア外膜のトランスロケータTOM40複合体の各サブユニットの配置マッピングを行った。さらに前駆体をTOM40複合体に膜透過中間体として蓄積させ,Tom22,Tom20,Tim50の相互作用マッピングのパターンがどのように変化するかを解析し,動作中のTOM40複合体の各サブユニットがプレ配列を認識し,内膜トランスロケータに引き渡す仕組みを明らかにした。 2.Tam41はカルジオリピン合成の必須酵素 カルジオリピン合成経路の鍵となるCDP-DAG合成酵素について,これまで小胞体膜に存在するCds1がミトコンドリア内膜でも働くと言われてきたが,Cds1ではなく当研究室で発見したTam41がミトコンドリア内膜のCDP-DAG合成酵素であることを見いだした。カルジオリピン合成経路の最後のミッシングリンクの同定といえる。 3.ノンストップミトコンドリアタンパク質の品質管理 ミトコンドリアタンパク質のmRNAから終止コドンが失われると,生ずるノンタンパク質はリボソームだけでなく,ミトコンドリアのトランスロケータの孔も詰まらせてしまう。Dom34/Hbs1ができかけのタンパク質をストールしたリボソームから強制的にミトコンドリア内に吐き出させ,孔詰まりを解消させることを見いだした。 4.異常タンパク質のER残留機構の解析 正常な液胞タンパク質CPYとその異常変異体CPY^*を直列に繋いだ4種の融合タンパク質をつくり,従来困難だったERADとその前段階としてのER残留のステップを区別することに成功した。異常タンパク質のER残留量を定量的に解析することで,ER残留にはYos9とHrd1が必要であること,ERADに必要な異常タンパク質の目印としての糖鎖シグナルは不要であることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.ミトコンドリアタンパク質の膜透過と機能発現: 予定通り順調に成果があがり,さらに予想を越えた成果も得られた。In vivo部位特異的光架橋により,作動中のTom22と他のTOM40複合体サブユニット,内膜トランスロケータ,前駆体との相互作用の詳細なマッピングに成功した。終止コドンを欠くmRNAの翻訳で生じる不良タンパク質がミトコンドリアのトランスロケータを詰まらせると細胞の増殖が強く阻害されること,細胞はこうした危険な状況を回避するためのDom34:Hbs1システムを用意しているという,予想しなかったメカニズムを解明した。また当研究室で見いだした内膜トランスロケータメインテナンス因子Tam41が,意外にも内膜でカルジオリピン合成に必須のホスファチジン酸からCDP-DAGへの変換を担う酵素であることを発見した。 2.小胞体タンパク質の品質管理: Yos9が糖鎖非依存に異常タンパク質を認識してHrd1に渡すことが,異常タンパク質の小胞体残留に重要であることを見いだした。また小胞体でもノンストップタンパク質がトランスロケータを詰まらせる細胞の増殖が強く阻害されること,細胞はこうした危険な状況を回避するためのDom34:Hbs1システムを用意していることを解明した。
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