なんらかの原因で細胞内にミスフォールドしたタンパク質ができてしまった場合、それを分解処理する必要があるが、本研究においては、細胞の品質管理機構において、1) どのように分解すべき基質のみが認識され、分解処理にまわされているか、および、2) 変性あるいは凝集したタンパク質を、どのように分解可能な状態に保持し、かつ効率的に分解装置にアクセスさせるか、という2点に注目して研究を行うことを目的とする。 平成21年度においては、小胞体においてタンパク質の構造形成(productive folding)および小胞体関連分解(ERAD)の両者に必須のプロセスとして関与している酸化還元酵素群のネットワークについて解析を行い、顕著な成果を得た。すなわち、小胞体に局在する21種類の酸化還元酵素にタグを付け、免疫沈降によって相互作用するタンパク質を同定するインターラクトーム解析を行った。その結果、主たる酸化還元酵素ERO1aに結合する数種類の酸化還元酵素群を見つけることができた。なかでもERO1aはPDIと強い結合を示し、機能的にも互いに制御し合うハブ複合体を形成していた。また酸化力はERO1aからPDIを経て、他の酸化還元酵素にも伝えられること、さらにこの複合体の活性を負に調節する薪たな因子ERp72が存在することも示すことができた。小胞体においては多くの酸化還元酵素が複雑なネットワークを形成しながら酸化還元反応を遂行していることが明らかになった。
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