小胞体内にミスフォールドタンパク質が生じた場合、小胞体からサイトゾルへ逆輸送した後、それをユビキチン・プロテアソーム系によって分解する機構が、それぞれの細胞には備わっている。これを小胞体関連分解(ERAD)と呼ぶ。 申請者たちは、ERADの分子機構を明らかにする上で、極めて重要な二つの因子を発見した。1つはミスフォールドしたタンパク質を糖鎖トリミング依存性に認識し、分解経路へまわす機能をもつEDEMであり、もう1つは分解タンパク質中のジスルフィド結合を還元し、ディスロコンを通りやすくする還元酵素ERdj5である。本年は、ERdj5の結晶解析に成功し、その分子構造を元として、ERAD経路の一連のプロセスを明らかにすることに成功した。その結果、ミスフォールドタンパク質は、その糖鎖トリミング依存的にEDEMによって認識され、さらにEDEMに結合した還元酵素ERdj5によってジスルフィド結合が開裂されたのち、分子シャペロンBipによって逆輸送チャネルまで輸送され、分解されることが明らかになった。 EDEM・ERdj5・BiP経路は糖タンパク質の分解経路であるが、非糖タンパク質の分解経路がカルネキシン・EDEM経路を使わず、BiP/ERdj5/BiPからなる一連の因子間をリレーされることによって分解されることを示すことができた。このように細胞内には、糖タンパク質、非糖タンパク質の2つのEARD経路があることを明らかにした。さらに、小胞体レドックス制御とERADとの関係について、ErolaおよびPDIをハブ複合体としたレドックスネットワークが存在することを示し、現在改訂稿を投稿中である。
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