計画研究
異常タンパク質応答UPRは、小胞体に高次構造の異常なタンパク質が蓄積すると活性化され、翻訳を一時的に停止したり、小胞体シャペロンや小胞体関連分解構成因子を転写誘導することによって、小胞体の恒常性を維持する。UPRは哺乳動物では、IRE1・PERK・ATF6の3つの経路から成り立っている。IRE1経路の下流の転写因子XBP1はmRNAスプライシングにより制御されているが、このスプライシングは、スプライソソームに依存せず、IRE1自身がXBP1 mRNAを直接切断する非典型的な反応である。この反応がどこで行われているかについて詳細に解析し、スプライソソーム依存的なスプライシングが核内で行われるのに対し、IRE1依存的なスプライシングは細胞質で行われることを証明した。この局在は迅速な反応開始を可能にしており、合目的的である。また、マウス体内でXBP1 mRNAのスプライシングが持続すると、血管内皮細胞がアポトーシスを起こし、動脈硬化に至ることを見いだした。さらにUPRによる小胞体の秩序制御機構を包括的に理解するために、新たにメダカを用いる解析システムを立ち上げ、メダカ培養細胞を用いて、メダカでも哺乳動物の場合と同様に、小胞体ストレスに応答して、XBP1 mRNAがスプライシングされること、翻訳抑制が起こること、ATF6がプロテオリシスを受けることを示し、安価に大量飼育を行うことができるメダカが、小胞体秩序制御機構を解析する上で、非常に有用なモデル生物となりうると結論した。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Proc.Natl.Acad.Sci. USA 106
ページ: 8326-8331
J.Cell Sci. 122
ページ: 2877-2886