研究概要 |
ペルオキシソーム形成機構の研究は、タンパク質の細胞内選別輸送、オルガネラ形成、生体膜形成など現代分子細胞生物学の課題の解明のみならず、形態形成・脳障害のメカニズム解明につながり医学領域への貢献も期待されている。高等動物ペルオキソームの形成機構の研究は我々が世界に先駆けて開拓した領域であり、オリジナリティの高い成果を発信してきている。本研究課題は真核細胞におけるオルガネラ、すなわち膜系という巨大かつ複雑な構造体を研究対象としており、扱う現象は遺伝子発現に伴うタンパク質の生合成とその細胞内での移動という時間的にも,空間的にも極めてダイナミックな現象である。このため種々の分子遺伝学的アプローチと細胞生物学および生化学的アプローチを併用する。これらのアプローチ法に共通な前提として、ペルオキシソーム形成にかかわる因子(PEX遺伝子)を残らず同定しなければならない。一方、ペルオキシソーム形成異常症の全相補性群病因遺伝子の解明と並行して、現在までに同定・単離した13種のPEX遺伝子(産物)の細胞生化学機能に関しては、PTS1受容体Pex5pをはじめマトリックスタンパク質の輸送・移入に関わる10種のペルオキシンとその機能の概要、Pex19pなど膜形成に必須な3つのペルオキシンと膜タンパク質輸送経路(Class IおよびClass II経路)を見出した。しかし、これらの分子機序や調節機構など全体像は明らかになっていない。従って、ペルオキシソームの形成と障害および機能発現制御を解明するためのより詳細な分子基盤を導き出すこと、さらにはオルガネラ形成・形態制御過程においてペルオキシン群がどのような時空間的遺伝子発現システムに基づいた分子動態調節システムを構築しているのかを解明することを本課題研究の目的とする。
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