研究概要 |
小胞体での膜蛋白質の構造形成システムについて下記の成果を得た。 (1)ストレプトアビジン結合タグ(SBP-tag)とストレプトアビジン(SAV)を使って,ポリペプチド鎖のトランスロコン内での移動を任意に停止・再開できる実験系を確立した。これを駆使し,トランスロコンサブユニットと透過途中のポリペプチド鎖の配置関係を精査した。小胞体トランスロコンはきわめて柔軟で,多数のポリペプチド鎖を収容できると結論した。二つの膜透過孔チャネルが協調的に機能するとする新しいモデルを提唱した。 (2)電位依存性K^+イオンチャネルには6つの膜貫通セグメント?が存在する。膜電位センサードメインを形成する4番目のTM(TM4)には正電荷が多数存在する。本年度は,ショウジョウバエのShakeK(v) channelについて,正電荷を有するTM4の組み込みには荷電アミノ酸残基間の相互作用が重要であることを明らかにした。 (3)SBP-tagとSAvを用いたタンパク質膜透過制御実験系を駆使して,膜透過駆動作用の定量化に成功した。膜透過の抑制に必要なSAv濃度を滴定し,透過作用を定量化した。(1)膜透過駆動作用はKd=10^<-9>程度のSBP-SAv親和性と拮抗する。(2)シグナル配列に近く,N-末端部分の引き込みとシグナル配列のトランスロコンヘの進入が共役する場合には,駆動作用が大きい。(3)シグナル配列の疎水性部分にプロリン残基を導入すると,N-末端の膜透過作用が低下する。これらを総合して,シグナル配列のトランスロコン内への進入がN-末端の膜透過を引き起こす主要な駆動要因であると結論した。
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