研究概要 |
膜タンパク質のオルガネラ膜標的化と構造形成システムに関して下記の成果を得た。 【1】アミノ末端ドメインの膜透過をSBP-tagとSAvを使って制御できる実験系を用いて,膜組み込み中間状態にあるシグナル配列や膜貫通配列の環境及びトランスロコンからの離脱を経時的に解析した。シグナル配列は膜貫通トポロジーを形成すると同時に,速やかに脂質環境へ離脱すること,シグナル配列へのPro-変異導入によって疎水性セグメントの膜内での配置が変化すること,それに伴って膜透過駆動作用が低下することなどが判明した。また,膜透過途上の2本のポリペプチド鎖は親水環境内に保持されていることが明らかになった。【2】ペルオキシソーム膜タンパク質であるABC輸送体ファミリーのD3アイソフォーム(PMP70)について,(1)最初の膜貫通セグメント(TM1)が小胞体に組みこまれる特性を有すること,(2)その組み込みをN末端の短いセグメントが抑制していること,(3)その抑制に5番目のSer残基(Ser^5)が必須であることなどを見出した。特異的なアミノ酸配列が小胞体組み込みを抑制すると結論した。【3】シグナル配列自体がポリペプチド鎖の膜透過駆動作用をもつことを実証した。ストレプトアビジンに結合するペプチドタグ(SBP-tag)とストレプトアビジン(SAv)を用いたポリペプチド鎖膜透過制御実験系を使って,ポリペプチド鎖の膜透過を抑制するのに必要なSAv濃度を滴定し,透過駆動作用を定量化した。(1)シグナル配列に近く,N-末端部分の引き込みとシグナル配列のトランスロコンへの進入が共役する場合には,SBP-tagにはたらく膜透過駆動作用が大きい。シグナルから離れた部位に対する膜透過駆動作用は近い場合にくらべて弱い。(2)シグナル配列の疎水性部分にプロリン残基を導入すると,N-末端の膜透過作用が若干低下する。これらを総合して,シグナル配列自体が膜透過駆動力を供給すると結論した。
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