計画研究
膜タンパク質のオルガネラ膜標的化と構造形成システムに関して下記の成果を得た。【1】小胞体トランスロコンでの新生ポリペプチド鎖の生合成に共役した膜透過を詳細に解析し、疎水性配列から60残基離れた正電荷アミノ酸が膜透過停止の亢進作用を示しうること、その際疎水性配列は一度小胞体膜内腔に露出すること、その後疎水性配列は正電荷の作用によって逆行し膜貫通状態となることを示した。正電荷は疎水性配列から予想以上に離れた状況で膜透過を抑制できると結論した。【2】小胞体での膜透過で、正電荷は疎水性配列の無い条件で膜透過を一時停止できること、LysとArgは同等の作用であること、停止作用は膜表面すなわちトランスロコンの細胞質側で発揮されること、その作用は負電荷の存在で強く抑制されること、その作用は高イオン強度の環境下では発揮されないことなどを明らかにした。正電荷は、単純なクーロン力による相互作用を介して、疎水性配列とは独立して膜透過を抑制する要因であることを実証した。これまで報告されてきた正電荷による膜タンパク質のトポロジー規定作用が統一的に説明可能となった。【3】アミノ末端ドメインの膜透過をSBP-tagとSAvを使って制御できる実験系を用いて,膜組み込み中間状態にあるシグナル配列や膜貫通配列の環境及びトランスロコンからの離脱を経時的に解析した。シグナル配列は膜貫通トポロジーを形成すると同時に,速やかに脂質環境へ離脱すること,シグナル配列へのPro-変異導入によって疎水性セグメントの膜内での配置が変化すること,それに伴って膜透過駆動作用が低下することなどを明らかにした。また,膜透過途上の2本のポリペプチド鎖は親水環境内に保持されていることを示した。
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