研究概要 |
ヒト化マウス末梢に存在するヒトB細胞の約40%は表面抗原の解析から本来骨髄に存在するべき未熟B細胞(pro-B, pre-B細胞)であることを明らかにした。マウス骨髄はヒトB細胞を分化の最終段階まで保持することができないと考えられる。残りの約60%はIgM+IgD-, IgM+IgD+のいわゆる成熟B細胞に分化していることを明らかにした。しかしIgM+成熟B細胞のほとんどがCD21^<lo>の状態にとどまっており、トランジショナルB細胞(T1-Bcell)と呼ばれる成熟B細胞の手前の状態で分化が停滞していることを明らかにした。一方、IgM+IgD+ヒトB細胞の抗体産生能を試験管内で検討したところ、疑似抗原およびサイトカイン刺激によりヒトB細胞はIgMのみならず、IgGを産生することが明らかになった ヒト化マウス内のヒトT細胞の機能を試験管内で解析した。純化したCD4, CD8+T細胞を抗CD3/CD28抗体でコートしたプラスティックディッシュで刺激を加えたところ健常人由来のヒトT細胞が増殖反応を示したのに対してヒト化マウス由来のT細胞は全く増殖反応を示さずまた、IL-2の産生もみられなかった。T細胞の刺激にPMA/ionomycinを用いても、あるいは抗原刺激時に外来からIL-2を添加しても同様の結果が得られた。このことからヒト化マウス内のヒトT細胞は抗原に刺激に対して応答できない状態にあることが示唆された。このようなT細胞の増殖不応答性が胸腺内で既に誘導されているのかどうかを胸腺細胞を用いて解析したところ、胸腺由来CD4+CD8-T細胞は抗原刺激に対して正常に増殖反応を示しIL-2も産生した。この結果からヒト化マウス胸腺内ではヒトT細胞は正常にポジティブセレクションを受けて成熟するものの末梢においてその機能を失うことが示唆された。
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