本年度も、引き続きDCによる自己あるいは外来抗原識別提示機構、免疫賦活あるいは免疫寛容への運命決定に至る分子基盤を解明することを主たる目的として研究を行い、以下のことを明らかにした。 1. DCによるIgA生産調節機構 B細胞のIgMからIgAへのクラススイッチは腸管粘膜固有層、パイエル板、腸間膜リンパ節などの粘膜関連リンパ組織で起こり、T細胞依存性経路とT細胞非依存性経路が存在する。本年度の研究から、1) MALTにおいてT細胞非依存性IgA生産を促すAPRILおよびBAFFの生産に重要なDCサブセットは、形質細胞様樹状細胞(pDC)であること、2) pDCからのAPRILおよびBAFFの生産誘導には、MALT由来のI型インターフェロン(IFN)が重要なことを明らかにした。 2. DCによるクロスプライミング誘導機構 TLRシグナルがDCによるクロスプライミングを亢進させることは知られているが、NODシグナルの役割は不明である。本年度の研究から、1) NODシグナルが、主としてCD8^+DCサブセット依存性のクロスプライミングを亢進させること、2) その機序として、MHCクラスI依存性抗原提示および共刺激分子発現レベルが亢進することを明らかにした。 3. I型IFNシグナルによる造血幹細胞(HSC)の増殖および疲弊 一過性のI型IFNシグナルがHSCの増殖を、過度かつ慢性のI型IFNシグナルがHSCの疲弊を、各々誘導することを明らかにした。
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