計画研究
平成19年度の研究実績について報告する。平成19年度は本研究計画に先立ち、マウス小腸において、主に細菌種特異的に配列の異なる16SrRNA遺伝子配列を解析する事で、小腸各部位特異的に存在する腸内細菌叢の同定を行った。十二指腸から回腸にかけて存在する細菌を解析した結果、十二指腸絨毛部分では、Proteobacteria、Lactobacillus、Bacteroidesが、回腸にはSegmented filamentous bacteria(SFB)やClostridium、Lactobacillusが優勢な細菌である事が明らかとなった。次に、回腸の粘液層及び腸管上皮細胞層における細菌を同定した所、粘液層ではLactobacillusやSFBが優勢であるが、上皮細胞層では90%以上の細菌がSFBである事が明らかとなった。さらに、免疫誘導組織であるパイエル板の上皮細胞層、及び内部に局在する細菌の同定を試みたところ、回腸部位ではパイエル板の上皮細胞層にはSFBが、パイエル板内部にはAlcaligenesが最優勢の細菌であった。これらの細菌のうち、特に免疫誘導組織であるパイエル板に存在するAlcaligenesと粘膜免疫機構の相互作用ついて解析を進めた。はじめにFluorescepce in situ hybridization法により、Alcaligenesの局在を解析したところ、パイエル板内部にAlcaligenesの存在が確認された。さらに、他の二次リンパ組織および小腸絨毛部分についても解析を進めたところ、孤立リンパ小節並びに腸管膜リンパ節においてもその存在が確認されたのに対し、絨毛部分には全く存在しない事が明らかとなった。これらの結果から、Alcaligenesは二次リンパ組織特異的に生息可能な細菌である事が考えられた。一方、Alcaligenesと粘膜免疫機構の相互作用を検証するために、糞便中のAlcaligenes特異的IgA抗体を解析したところ、SPF環境下では特異的IgA抗体が確認されたのに対し、無菌マウスではこれらの抗体は検出されなかった。以上の結果は、代表的な粘膜免疫誘導組織であるパイエル板における細菌、宿主間の共生関係の発見のみならず、共生細菌による新たな免疫誘導機構の可能性を含む重要な発見と言える。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件)
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