研究領域 | 免疫系自己-形成・識別とその異常 |
研究課題/領域番号 |
19059003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清野 宏 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10271032)
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研究分担者 |
SIDONIA Fagarasan 理化学研究所, 免疫アレルギー科学総合研究センター, チームリーダー (00391970)
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キーワード | 腸管IgA / パイエル板 / 胚中心 / 濾胞性ヘルパーT細胞 / Foxp3+制御性T細胞 / PD-1 |
研究概要 |
本研究の目的は粘膜免疫機構による外界環境因子との共生関係確立のメカニズムを明らかにすることであり、濾胞ヘルパーT細胞(TFH細胞)などのバイエル板免疫誘導細胞と共生細菌との相互作用を明らかにしていくことを研究計画としていた。具体的にはTFH細胞に高発現する抑制性受容体であるProgrammed cell death-1(PD-1)の欠損マウスを解析し、PD-1がTFH細胞と共生細菌との相互作用にどのように関与しているかを明らにするという研究手法をとった。 PD-1欠損マウスと正常マウスとの比較解析の結果、PD-1欠損マウスではバイエル板胚中心においてTFH細胞数が増加しバイエル板の胚中心内部でのB細胞選択に異常が生じていることが見出された。さらに、腸管IgAの総量は正常マウスとPD-1欠損マウスで変わりなかったが、PD-1欠損マウスにおいてはIgAで覆われている腸内細菌の割合が正常マウスに比べ減少していたことからPD-1欠損マウスでは腸内細菌に対する結合力の低いIgAが分泌されていることが示唆された。また、正常マウス及びPD-1欠損マウスにおける腸内細菌叢を比較したところ、腸内細菌の総数に差は見られなかったもののPD-1欠損マウスでは腸内細菌叢の構成が大きく変化していた。以上の結果よりPD-1は、腸管IgA抗体の選択に関与し腸内細菌を制御することで、腸管免疫系の恒常性維持に関与していることが明らかとなった。 一方でPD-1欠損マウスでは腸内細菌に対する抗体が血清中からも検出されたことから腸内細菌叢の変化が全身免疫系の異常な活性化につながっている可能性が示唆された。このことからPD-1は腸管のみならず全身免疫系の恒常性維持に関与しているものと考えられる。 このように本研究は生体の恒常性維持における「共生細菌と免疫系の自己形成」のメカニズムの一端を明らかにした点で大変意義深いものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究を論文執筆するに至ったため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究結果を発展させ、生体の恒常性維持における「共生細菌と免疫系の自己形成」メカニズムのさらなる全体像を明らかにすべく研究を推進する計画である。
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