腸管に代表される粘膜面は数百種類の共生細菌に恒常的に曝されているが、我々は巧妙かつ柔軟な「粘膜免疫システム」を備えることで非自己である常在細菌に対して共存状態を創出している。しかし、一たびこの共生関係が崩れると、炎症性腸疾患や肥満といった様々な疾患発症に直結する。このように、粘膜面における「共生細菌と免疫系の自己形成」は、生体の恒常性維持という観点からも、その免疫生物学的な重要性ははかりしれない。しかしながら、この「共生細菌と免疫系の自己形成」についての、分子・細胞・個体レベルでの機序解明は殆どなされていない。そこで本研究では、共生細菌、上皮細胞・M細胞、免疫系細胞群(樹状細胞、B細胞、T細胞等)からなる三次元的細胞間相互作用の詳細について、無菌状態から常在菌層の確立、そして病態形成という時間軸を伴う環境質的変化を含めて粘膜免疫機構による外界環境因子との共生関係確立について明らかにする。
|