研究概要 |
免疫系の自己識別機構の失調や破綻による自己免疫疾患の発症機構を、特にT細胞の抗原特異的、抗原非特異的な観点から解明し、新しい自己免疫疾患の制御法を提唱することを目的とした。研究代表者は、自己認識のための受容体であるT細胞受容体(TCR)に注目し、自己免疫応答の現場に集積しているTCRのクローナルな解析手法を開発してきた。単一細胞よりクローニングしたTCR機能を再構築するユニークなシステムを駆使し、その反応性を細胞への遺伝子導入による再構築、骨髄細胞への導入による個体レベルの反応などで検討した。その結果、抗原特異的な応答局所に集積するT細胞クローンの主要なものが、免疫された抗原に対する特異性を持たないことを見いだした。そこで、2つの異なる抗原とそれを認識するTCRを用いたモデル系を作成し、主要な抗原刺激により、副次的なクローンが至適濃度以下の抗原刺激で増殖することを見いだした。これからのことは通常の免疫応答に伴い、自己抗原との反応が惹起されること可能性を示している。 研究分担者は、TNF受容体方T細胞補助シグナル分子(OX40,GITR,CD27,HVEM)による自己免疫疾患発症のメカニズムを明らかにすることを目的として研究を進めた。同型分子であるOX40とHVEMがT細胞依存的炎症性腸疾患において、それぞれ促進的あるいは抑制的機能に機能することを見いだした。そこで炎症性腸疾患および自己免疫疾患モデルにOX40,GITR,CD27,HVEMなどの遺伝子改変マウスを適応し、T細胞免疫寛容制御における上記分子の機能的冗長性および特異性を解析した。
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