計画研究
免疫系の自己識別機構の失調や破綻による自己免疫疾患の発症機構を、特にT細胞の抗原特異的、抗原非特異的な観点から解明し、最終的には新しい自己免疫疾患の制御法を提唱することを目的として研究を推進した。研究代表者らは、II型コラーゲン誘発関節炎の所属リンパ節での単一T細胞のT細胞抗原受容体を中心とした遺伝情報解析と機能再構築の研究により、抗原特異的なT細胞免疫応答に伴い抗原特異性の異なるT細胞が活性化するメカニズムの存在を示した。さらに抗原特異性の明らかな2種類のCD4陽性T細胞を用いたモデル系での解析により、抗原Xが大量に存在しX特異的T細胞が十分に増殖する条件下で、ごく少量しか存在しない抗原Yに依存してY特異的なT細胞が活性化する現象を観察した。この現象は従来から報告されている抗原非特異的でサイトカインに依存するT細胞活性化、すなわちbystander activationとは異なると考えられたため、「拡張抗原提示モデル」と命名した。このような現象は、外来抗原に対する免疫応答時に自己抗原に対するトレンランスが破綻するメカニズムや、自己免疫病態でみられるepitope spreadingの細胞レベルでの基盤となっている可能性が考えられる。これらの研究を発展させ、拡張抗原提示に寄与する共刺激分子や表現型にっき解析している。大量に存在する抗原に反応するT細胞と拡張抗原提示により活性化されるT細胞は、その表現型と産生するサイトカインが異なることを見出した。研究分担者は、OX40シグナルが誘導性制御性T細胞(iTreg)分化を強く抑制することを明らかにした。同時に、OX40シグナルを人為的に抑制することによりiTreg細胞分化を促進できることを示し、OX40およびiTreg細胞を標的とした自己免疫疾患治療の可能性を証明した。
すべて 2010 2009
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Arthritis Rheum 62
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Ann Rheum Dis 68
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