計画研究
本研究課題では、自然発症白血病および全身性自己免疫病(SLE)の遺伝子改変マウスモテルを駆使して、自己応答としての変異(白血病)細胞に対する免疫応答と寛容の分子機構の研究を進めた。正常個体で、加齢に伴い特徴的な形質(PD-1+CXCR5+C/EBPa+Bc16+Satb1-)と機能(クローン増殖能の低下とOsteopontin<OPN>を含む炎症性サイトカインの産生)を有する記憶形質のCD4+T細胞(Senescence associated T cells,Tsen)が増加するが、Tsen細胞は老齢マウスの自発胚中心に局在し、濾胞胚中心形成に必須のBc1-6-/-マウスやB細胞欠質(μMT)マウスでは出現しないので、新しいタイプの濾胞性T細胞であることが示された。また白血病自然発症と進展の過程で、Tsen様の細胞が白血病細胞のリンパ組織への浸潤に伴って新生濾胞胚中心内において急速に増加することが明らかになり、これが悪性化にともなう免疫機能低下の主要な要因であると考えられた。OPNは重要ながん促進因子のひとつであり、Tsen細胞が白血病の進展促進に関与する可能性も示唆される。さらにTsen様細胞は、典型的SLEを自然発症するBWF1マウスにおいても、その腎炎発症に伴って濾胞胚中心内で急速に増加することも明らかになった。これらのTsen様細胞は、自己のB細胞に反応して大量のOPNを産生し、このOPNが腎炎発症に関与していることも示唆された。これらの結果は、通常の加齢に伴うCD4+T細胞の機能変容(免疫老化)と、白血病(変異自己細胞)や全身性自己免疫病にともなう機能変容とが共通の機構によっていることを強く示唆しており、免疫老化とがんや全身性自己免疫病に共通する機構の解明は、これらの病態発症の制御に向けて、新しい局面を開きうるものと考える。
1: 当初の計画以上に進展している
ループスモデルマウスにおいてTsen細胞の解析が進み、その結果としてヒトのSLE腎炎の新規治療法の開発の可能性を示唆する所見がえられたことは、今後新しい創薬シーズとして大きな進展であった。
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