研究概要 |
近年、腸管に共生する腸内常在菌が、免疫系に多大な影響を及ぼしていることが明らかになってきた。我々ヒトの健康によい影響を及ぼす腸内細菌がプロバイオティクス細菌として知られている。そこで、プロバイオティクス細菌であるBifidobacterium breveの作用機構を解析した。マウスにB.breveを経口投与し、3か月後に腸管のT細胞を解析すると、大腸においてIL-10を産生するCD4陽性T細胞の数が約2倍に増加していた。IL-10は制御性T細胞から大量に産生されることが知られている。B.breve投与により、Foxp3陽性細胞からのIL-10産生は増加しないが、Foxp3陰性細胞からのIL-10産生が増加した。制御性T細胞には、Foxp3陽性細胞以外に、Foxp3陰性でIL-10を産生するTr1細胞が存在している。Tr1細胞は、cMaf,IL-21,Ahrを発現している。そこで、腸管樹状細胞をB.breveで刺激し、そこにナイーブT細胞を加えて4日間共培養し、T細胞におけるこれら遺伝子の発現を解析した。その結果、B.breveで処理した群でcMaf,IL-21,Ahrの発現が亢進していた。Tr1細胞は、IL-10,IL-27により分化誘導されることが知られている。そこで、これらサイトカインの関与をノックアウトマウスを用いて解析したところ、両サイトカインの腸管樹状細胞からの産生が重要であることが示唆された。免疫不全マウスにナイーブT細胞を移入するとT細胞依存性に腸管炎症を発症する。そこにB.breveを投与すると、腸管炎症が抑制された。しかし、移入するナィーブT細胞をIL-10欠損マウス由来のものにすると、その効果が全く認められなかった。以上の結果から、B.breveは、腸管樹状細胞に作用し、IL-10,IL-27を介しTr1細胞を誘導し、腸管炎症を制御することが明らかになった。
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