平成20年度は、制御性T細胞(Treg)由来核移植ES細胞1D2クローンから得られた機能的TCRβ遺伝子を持ったマウス系統lD2βを樹立し、制御性T細胞の分化・機能を解析するためにFoxp3-hCD2レポーターマウス、Foxp3変異scurfyマウスと交配し、またTCRβ鎖を固定したときのTCRα鎖レパトワを解析するためにTCRCα+/-背景のマウスを作製した。まずTreg分化を解析した結果、1D2βマウスではほぼ全てのT細胞が1D2β鎖(Vβ4)を発現するが、野生型と比較してFoxp3^+CD4^+T細胞の発生・分化にはほとんど影響が見られなかった。しかしながら、このlD2βマウスにscurf変異を導入したとき、発症する自己免疫疾患の臓器特異性に変化が見られ、皮膚炎は軽減する一方で、通常のscurfyマウスでは認められない大腸炎を発症した。この結果から、Treg由来TCRβ鎖により、T細胞の抗原特異性に大きなインパクトが与えられることが明らかとなり、1D2 TCRが腸管由来の抗原を認識することが示唆された。 これまで1D2由来の機能的TCRα遺伝子を受け継いだマウス系統をgermline伝達によって樹立することができなかったが、Treg分化と機能におけるTCR特異性を明らかにするためにはlD2αβ両方をモノクローナルに発現させることが必須である。この目的のため、lD2α鎖をレトロウイルスによる強制発現あるいはトランスジェネシスにより発現させる方法をとることとした。そして1D2α cDNAをRT-PCRによりクローニングし発現ベクターを構築した。
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