これまでにTreg由来核移植ES細胞クローン1D2から機能的TCRβ遺伝子を受け継いだマウス系統1D2βを樹立した。本年度はこのマウスを利用して以下の研究を進めた。 (1) Treg由来TCRの特異性の解析:1D2クローンがTreg由来であることを証明するためにFoxp3^<hCD2>.1D2β.TCRCα^<+/->マウスからFoxp3^+およびFoxp3^-CD4^+T細胞を単離してTCRαレパトワを解析した。その結果、1D2α clonotypeがVα4.3/Jα44を発現するTregのうち約95%、non-Tregにおいては約60%を占めたことから、1D2αβTCRは主に(排他的ではないものの)Treg分化を誘導することが示唆された。また、1D2αβTCRを個体レベルで再構成するためにCD4^+CD8^+細胞以降の胸腺内分化段階で1D2αを発現するトランスジェニックマウスの作製を進めた。 (2) Tregおよびex-TregのTCRレパトワ解析:最近我々は、Tregはヘテロな集団であり、多くは安定にFoxp3を発現するコミットされた集団であるが、一部はFoxp3を不安定に発現しヘルパーT細胞へ分化転換する能力を保持した可塑的な集団であることを明らかにした。Treg分化の運命決定・可塑性におけるTCR特異性の役割を明らかにするために、Foxp3^<hCD2>.1D2β.TCRCα^<+/->マウスからFoxp3^+T細胞をT細胞欠損マウスに移入し、Foxp3発現を維持するTregと失ったex-Tregを単離してそのVα2レパトワを比較した。予備実験の結果、両者に見出される配列は異なっており、さらに後者の方が前者と比較して多様性が低いことが明らかになった。従って、ある特定の抗原特異性を持ったTregのみが分化の可塑性を示すことが示唆された。
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