研究概要 |
Foxp3^+制御性T細胞(Treg)は広範かつ頑健な免疫抑制機能を示し、自己免疫寛容の成立・維持に中心的な役割を担っている。我々は一部のFoxp3^+ T細胞がFoxp3発現を失ってヘルパーT(Th)細胞(exFoxp3 Th細胞)へと分化する可塑性を示すことを見出した。Foxp3^<GFPCre> x ROSA26^<RFP>マウスを用いたfate mapping解析の結果、exFoxp3 T細胞はTregのリプログラミングではなく、活性化に伴う一過的かつpromiscuousなFoxp3発現を反映することを明らかにした(Miyao et al. Immunity,2012)。さらにTCRレパトワ解析を行ったところ、exFoxp3 T細胞はFoxp3^+ T細胞よりもFoxp3^-CD44^<hi> effector/memory T細胞とより強い相同性を示すことを見出した。以上の結果から、Foxp3^+ T細胞がTregへ不可逆的に分化するか一過的なFoxp3発現を経てexFoxp3 Th細胞へ分化するかという運命決定には、TCR特異性が重要な役割を担っている可能性が考えられた。この仮説を検討するために、T細胞レセプター(TCR)トランスジェニックマウス及びその抗原を自己抗原として発現するトランスジェニックマウスを用いて自己反応性T細胞の分化を解析したところ、自己抗原特異的T細胞は、多様性のあるTCRレパトワに置かれたときは安定にFoxp3を発現してexFoxp3 T細胞には分化しないことがわかった。一方、この抗原特異的TCRのみをモノクローナルに発現する条件下ではexFoxp3 T細胞への分化も認められた。以上の結果から、Treg vs. exFoxp3 Th細胞の運命決定は、抗原特異性の他にそのT細胞の置かれた環境にも影響されることが明らかになった。
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