3次元構造を有する免疫組織、臓器を人工的に再生し、それらを免疫反応の解析に用いるとともに重症感染症や癌あるいは免疫不全症、種々の免疫病の治療に用いる試みは今後の免疫学での基礎研究、臨床応用に欠くことの出来ない重要な研究分野であると考える。我々は人工的にリンパ節組織の構築を行い、その構造が自然のリンパ節に類似した抗原特異的抗体産生能を有する組織を構築する方法を確立した。我々の人工リンパ節を非免疫状態の個体、あるいは免疫不全症(SCID)の個体に移植し抗原で免疫すると、抗原特異的抗体産生系において、正常リンパ節では到達し得ないほどの強い二次免疫反応を誘導出来た。このような高効率の免疫機能をもった人工リンパ節の成功は世界で初めてである。また、T細胞の記憶細胞、B細胞の記憶細胞が人工リンパ節内に濃縮されるという結果が得られた。このことは、人工リンパ節において強い二次免疫反応が急速に引き起こされる理由の一つと考えられた。一方、人工リンパ節を構築する際にTH1型の免疫反応を誘導するような条件下で人工リンパ節を構築すると抗原特異的にIFNγを効率に産生する組織を構築出来、担がんマウスに移植すると強い抗腫瘍効果を示した。これらの結果は、我々の人工リンパ節が将来、免疫不全症、重症感染症、エイズなどの難治性感染症、あるいはがんの免疫療法に応用出来る可能性を示している。我々の人工リンパ節は容易に移植、脱着することが出来ることからも将来の臨床応用の可能性を示唆している。一方、このような装置は免疫反応を3次元構造物で解析することを可能にする。またリンパ組織の分化、構築の機構、免疫記憶、免疫抑制、免疫監視機構などの研究を行うことが可能となる。さらに、その免疫細胞系がほぼ100%ヒト由来の細胞から構成されているヒト化マウスを用いて、ヒト型の人工リンパ節、リンパ組織の構築が可能であることを示した。
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