シロイヌナズナの温度感受性変異体rrd1、rrd2、rid4は、制限温度下で帯化根を形成するという特徴をもつ。この帯化根形成に関して、半同調的側根形成誘導系を用いて定量的に解析し、側根原基形成開始時に細胞分裂領域が拡大し、拡大した分裂域を保ったまま原基が発達して帯化根となることを示した。また、rrd2の温度感受性の原因と思われる変異を、ペンタトリコペプチド(PPR)タンパク質遺伝子のAtlg32415に見出した。RID4もPPRタンパク質をコードし、RRD1がポリA特異的リボヌクレアーゼ様タンパク質をコードすることから、PPRタンパク質がガイドするRNA分解が細胞分裂域を制限する機構に関わっていると推論した。 メリステム新形成が温度感受性を示す変異体rid3については、シュート再生過程を中心に解析を行い、その結果からRID3がCUC-STM経路の遺伝子発現を負に制御し、メリステム新生につながる細胞増殖を調節していることが明らかになってきている。本年度は新たに、カルス表層でRID3とCUC1が互いに排除し合うような発現パターンを示すこと、CUC1高発現域にメリステム構築の元となる細胞塊が生じることなどが判明した。胚発生過程におけるRID3発現についても検討したが、初期には胚全域で一様に強かった発現が、発生段階が進むにつれてメリステム予定領域を中心に低下していくような変化が見られ、シュート再生時の発現パターンとの類似が窺われた。また、RID3がコードするWD40リピートタンパク質の細胞内局在を調べ、主に核に存在することを示す結果を得た。 以上のほか、srd2、rpd2など、各種温度感受性変異について解析を進め、メリステム新形成に必要な細胞増殖統御とそれに関わる遺伝子機能を広く遺伝的に抽出した。
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