研究概要 |
初年度の今年は、以下の準備を行なうと共に、いくつかの成果を上げることができた。 (1)葉原基における正の細胞増殖促進因子AN3および負の制御因子ROT4の機能の解明an3の表現型を抑圧/強調する変異体を複数単離すると共に、マイクロアレイデータに基づく下流遺伝子候補の、葉原基での発現パターンを解析し、絞り込みを行なった。またAN3の発現部位とarrest frontとの関連を知るため、AN3遺伝子を葉原基の特定の部位で、異所的に発現誘導する系を構築し、パイロット実験まで完了した。一方ROT4はペプチドの機能上、必要とされるドメインの範囲の同定を、truncatedペプチドの作成により進めた。 (2)葉柄/葉身の境界および有限増殖性決定機構の解析とBOP1,BOP2の機能 葉が無限成長しarrest frontの作用を示さない植物種モノフィレアから、その機能欠失がシロイヌナズナにおいて葉の無限成長をもたらす遺伝子BOP1,BOP2のホモログを単離し、シロイヌナズナbop1/2変異体に対して形質転換したどころ、正常な機能を有することが分かった。一方これと関連して、シロイヌナズナ葉柄の発生様式を詳細に解析したところ、従来の理解と異なる重要な知見を得た。 (3)葉の極性軸がシロイヌナズナと大きく異なる単面葉における葉の発生の制御系解明 イグサ属における単面葉の発生を、各種極性軸マーカーにより解析した。その結果、単面葉は葉身に背軸側の性質しか有さないこと、それにもかかわらず、単子葉植物に固有の遺伝制御系を使って葉に平面性を与えることが可能となっているらしいこと、すなわち背腹性に基づく平面性構築モデルは一般則でないこと、また向軸側の性質を与える遺伝制御系のうち、microRNA関係の制御が異常となっている可能性などが強く示唆された。
|