研究概要 |
(1)葉の異時性制御とmicro RNA これまで解析してきたいわゆる補償作用と逆に、細胞数が増加して細胞体積が減少するような表現型を示すmsc変異体の原因遺伝子のクローニングの結果、これらはいずれもheteroblastyの異常をもたらすmiR156-SPL系に含まれる遺伝子の変異であった(Usami et al., 2009)。そこでheteroblasty制御に関診るもう一つの経路、tasiR-ARP系について調べたところ、こちらの変異体では、細胞数・細胞体積の変化が見られなかった。したがって特定の葉位における葉の中の細胞数・細胞体積はmiR56-SPL系によって制御されていることが判明した。 (2)葉原基における正の細胞増殖促進因子AN3および負の制御因子ROT4の機能の解明 an3の表現型を強調する変異体として#2047を同定した。an3#2047二重変異体は、子葉の形成される領域に不定数の根を作るという、特異な表現型を示す。現在、#2047変異の原因遺伝子について、確認中である。またan3がas2の葉の背腹性異常を強調することを見いだし、その原因として、リボゾーム関連遺伝子群を同定した(Fujikura et.al., in press)。一方ROT4については、ペプチドの機能上、必要とされるドメインを明らかとした。さらにROT4を葉の中でキメラ上に発現させたところ、ROT4は領域自律的に作用することが判明した。 (2)葉の極性展開制御系の解明 ANについては、既知のモチーフ以外の領域がその機能に重要であるらしいこと(Cho et.al., 2008)、その産物が細胞質とゴルジ体近傍の膜とに局在することを明らかとした。またANのホモログをダフリアカラマツから単離し、シロイヌナズナan変異体の表現型を相補することを示した(Li et.al., 2008)。 またrot3-1についてはその染色体上の欠失領域を正確に決定し、タイリングによるマッピングのケーススタディーとして検証に供した結果、十分な分解能を持つことが確認された(Nagano et.al., 2008)。 (3)葉柄/葉身の境界および有限増殖性決定機構の解析とBOP1, BOP2の機能 bop1 bop2の葉の形成を詳細に再検討した結果、見かけと異なり葉柄を欠くことを見いだした。さらに鋸歯形成に伴う葉身での局所的な細胞増殖についても、従来の理解が間違っていたことが判明した。 (4)葉の極性軸がシロイヌナズナと大きく異なる単面葉における葉の発生の制御系解明 イグサ属における単面葉の発生に関し、各種極性軸関連遺伝子群について解析した結果、この背景には、背腹性制御系の変化や、尻相同遺伝子の発現制御の変化があったことが明らかとなった。 (5)ゲノム倍加による葉の細胞数・細胞体積の変動 各種の葉サイズに関する変異体を親株として、4倍体のシリーズを作成した。また8倍体も選抜して解析したところ、8倍体では細胞体積が増加しながら、細胞数はむしろ減少することが認められた(Tsukaya 2008)。
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