研究概要 |
本研究計画の目的は、茎頂メリステムにおいて葉原基が発生し、葉の3次元構造(1. 基部-先端部軸構造、2. 向(表)-背(裏)軸構造、3. 左右相称性構造)が生み出される分子機構を解明することである。すでに、我々は、上記した3つの軸形成にはシロイヌナズナのASYMMETRIC LEAVES 1(AS1)とAS2タンパク質が重要であること、これらのタンパク質が葉原基形成の初期から機能していること、共に核タンパク質であること、低分子RNAの蓄積量を調節することを通して葉の向-背軸性を制御していること、クラスIホメオボックス遺伝子(BPなど)の転写を介して基部-先端部軸方向の成長を制御していることを示した。本年度は以下のようなことを明らかにした。 1. AS1/AS2はBPとは独立にETNの転写を直接制御していることを示した。また、AS2/AS1が、ETN, ARF4の転写レベルを抑制しているmiR390の生成を促進することを示した。また、遺伝学的解析により、AS2/AS1が葉の向軸側で、ETN, ARF4の転写抑制を通して葉の向背軸形成を促進していることを示した。2. AS2タンパク質は核小体の周辺の特定の構造体(AS2 body)に局在するが、このような局在に必要なAS2上のアミノ酸配列を同定した。3. AS2は、42個のメンバーからなるAS2遺伝子ファミリーの一員であり、すべてのメンバーがよく保存されたAS2ドメインをコードしている。ドメイン置換実験により、AS2と他のメンバーのAS2/LOBドメインは置換できず、機能的には異なることがわかった。つまり、わずかなアミノ酸配列の違いが、AS2の機能に重要であることがわかった。5. hdt1などのHDAC遺伝子の変異体は、as1, as2変異と遺伝的に相互作用するが、これ以外にもas2, as1変異の表現型を亢進し、向軸側化が抑制される変異体が分離された。
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