研究概要 |
本研究計画の目的は、茎頂メリステムにおいて葉原基が発生し、葉の3次元構造(1.基部-先端部軸構造、2.向(表)-背(裏)軸構造、3,左右相称性構造)が生み出される分子機構を解明することである。これらのタンパク質は細胞核に局在し、遺伝子発現の抑制に働いていると考えられる。昨年度までに、次のことがわかっていた。AS2タンパク質は、核質と核小体の近傍に顆粒状(AS2 bodyと命名)に局在する。AS1はAS2 bodyと重なるが、小さな斑点状に存在することもある。抑制を受ける遺伝子の代表例は、幹細胞の維持に必要なクラス1 KNOX (BP)などのホメオボックス遺伝子や葉の背軸側(裏側)化に関わると仮定されるETT/ARF3, KAN2, YAB5などである。また、ある種の小分子RNAの量も制御されている。さらに、as2やas1変異体の背景では、リボソームの形成に必要な種々の遺伝子や染色体複製や分配に必要な遺伝子が変異すると、葉の向軸側の分化が特異的に抑制され、裏側化した棒状の葉が形成されることがわかってきた。 1.AS1とAS2が制御する遺伝子の解析:発現アレイ解析とChIP-on-chip解析から、AS1とAS2により直接制御されている候補遺伝子を32個に絞り込んだ。この中には、ETT/ARF3とBP/KNAT1が含まれていた。さらに、遺伝学的解析結果も、下流で制御されている主要な遺伝子は、ETT/ARF3, ARF4とBP/KNAT1であることを示した。以上の結果は、これらがAS1やAS2の直接的な標的遺伝子であるというこれまでの我々の結果と一致する。2.As1とAs2の核小体近傍顆粒(AS2 body)への局在の仕組み:AS2の種々の変異体を用いた研究により、AS2 bodyへの局在に必要なシグナルはAS2/LOB domain内にあることがわかった。現在、さらに詳細な構造解析を行っている。3.as2あるいはas1変異背景におけるリボソーム関連遺伝子の葉の発生における機能解明:as2またはas1変異に加えて、リボソーム形成に関わる遺伝子に変異が入ると、葉の向軸側化が特異的に停止する。我々は、リボソームRNAのプロセシングに関わる遺伝子の変異も同様な異常を示すことを見いだした。
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