研究領域 | 植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系 |
研究課題/領域番号 |
19060003
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
町田 泰則 名古屋大学, 大学院理学研究科, 特任教授 (80175596)
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研究分担者 |
町田 千代子 中部大学, 応用生物学部, 教授 (70314060)
高橋 広夫 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (30454367)
岩崎 行玄 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (20193732)
笹部 美知子 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00454380)
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研究期間 (年度) |
2007-07-25 – 2013-03-31
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キーワード | 葉の向軸面・背軸面の発生会化 / miRNA / ETT/ARF3, ARF4発現制御 / TGS / PTGS / DNAメチル化 / 細胞分裂周期 / サイトカイニン合成酵素遺伝子 |
研究概要 |
(1)AS1-AS2は、葉の発生に関わっている遺伝子の発現レベルを分化状態にふさわしい状態に保つ機能を果たしていることを明らかにした。さらに、AS1-AS2は、植物細胞の未分化状態から分化状態への移行を保障する機能も果たしていることを示し、葉の発生に関わる遺伝子発現のStabilizerであるという概念を提唱した。(2)AS1-AS2は、ETT/ARF3の5'上流域に直接結合して抑制する(転写レベルの抑制 : TGS)と同時に、miR390とtasiR-ARFの上昇を誘導して、間接的に抑制する(転写後抑制 : PTGS)。つまりETT/ARF3の発現は、TGSとPTGSにより、二重に抑制されている。(3)これらの抑制にはETTのコード領域内の限られた領域のCGのメチル化が関わっている。(4)葉の発生において、ETTとARF4を抑制することが必須である。これは分化全能性の抑制と関連している。(5)AS2 bodyはM期の直前に形成され、中期以降に倍加し、染色体の分配にともなって娘核に分配され、細胞質分裂の前後で、消失する。AS2 bodyへの局在とAS2機能には相関がある。(6)AS1-AS2が機能するためには、細胞周期の適切な進行が必要であるらしい。(7)ETT/ARF3の下流では、細胞周期を制御している因子と植物ホルモンの合成酵素遺伝子が制御されている。(8)さらに最近、ETT/ARF3の発現に長鎖ノンコーディングRNAが関わっていることがわかった。繰越すことにより、(6-8)の課題について進展が見られた。すなわち、(6)DNAポリメラーゼαの関与が認められたこと、(7)CDK阻害因子の遺伝子やIPT3遺伝子が見いだされ、葉形成に関わっていることがわかった。(8)長鎖非コードRNAの葉形成における役割の解明が進み始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
AS1-AS2が、ETT/ARF3遺伝子のコード領域のDNAメチル化の正の因子であることがわかったが、これは、当初予期していないことであった。また、AS2タンパク質が核内スペックルを形成し、細胞周期のM期を通して、正確に分配されていくことがわかった。これも、研究開始時には予見されなかった結果であり、今後、生物学的意味の解明が待たれる。さらに、ETTプロモータ領域に長鎖非コードRNAが転写されていること、それが葉の形態に影響を与えていることが見いだされた。これも予想を上回る成果であり、今後に引き継がれている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、平成24年度で終了するが、次のような課題を研究することにより、シュートメリステムにおける、葉の発生と細胞の未分化から分化状態への移行についての興味深い仕組みが解明されると期待される。 (1)ASl-AS2によるETT gene bodyのメチル化の機構の解明、(2)細胞周期の進行とETTの発現抑制との関連性の解明、(3)最近見つかった、長鎖非コードRNAとETT発現制御との関連性の解明.
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