研究領域 | 植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系 |
研究課題/領域番号 |
19060004
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
岡田 清孝 基礎生物学研究所, 所長 (50101093)
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研究分担者 |
立松 圭 基礎生物学研究所, 植物器官形成学研究室, 特別協力研究員 (00373324)
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キーワード | 植物発生 / 葉極性 / 表裏 / コハク酸セミアルデヒド / テトラピロール合成経路 / マイクロRNA / レトログレードシグナル / 葉形成 |
研究概要 |
葉の表裏軸の極性が不安定になる突然変異体enf1の解析から、コハク酸セミアルデヒド(SSA)が葉の向背軸形成に関わる可能性を示し論文に発表した。さらに、enf1の抑圧変異体の単離解析を行い、抑圧変異体の一つgsa2変異体は、テトラピロール合成経路のグルタミン酸1セミアルデヒドアミノ基転移酵素に変異を持つこと、テトラピロール合成経路の別の酵素グルタミルtRNA還元酵素をコードする遺伝子の変異体hema1もenf1変異体の表現型を抑圧することがわかった。これらの結果から、SSAによる葉の表裏軸形成がテトラピロール合成経路と関連することを示した。 表側領域の分化制御に関わるHD-ZIPIII遺伝子の発現を抑制するmiRNA165/166の発現制御機構の解析を進め、裏側表皮細胞で特異的に発現するMIR165Aが裏側領域全域でのHD-ZIPIIIの抑制に十分であることを見いだした。 野生型の葉の細胞系譜を追った解析から、発生初期に表側に属する細胞が発生過程の進展に伴って裏側特異的な遺伝子発現を開始することを見出し、表から裏への極性転換が起きていることを示した。葉緑体タンパク質ENF2の変異体ではこの極性転換が遅延すること、enf2変異体では大部分の葉緑体遺伝子の発現量が低下していること、また、enf2 gun1二重変異体ではこの転換が比較的正常に進行することから、GUN1依存的なretrograde signalがこの過程を制御していることを示した。 KANAD1が葉の成長と周縁部の分化に冗長的に機能する2つのWOXファミリー遺伝子、PRS/WOX3両遺伝子の発現を抑制することで、両遺伝子の発現領域を表裏の中間領域に限定していること、また、YABBYファミリー遺伝子はWOX1の発現を正に制御することから、葉身の展開に表/中間/裏側の3領域の形成が必要であるとする新しいモデルを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コハク酸セミアルデヒドやテトラピロールなどの代謝経路が葉の発生に関わるという新たな研究分野を拓いた。葉の表から裏への細胞の運命転換は、植物における新たな発見で大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
葉の表裏軸形成における代謝経路の役割と代謝物質の機能を明確にする。 葉の表から裏への細胞の運命転換について数理モデルによる解析をおこなう。
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