研究領域 | 植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系 |
研究課題/領域番号 |
19060005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柿本 辰男 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70214260)
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キーワード | 茎頂メリステム / 根端メリステム / 細胞増殖 / 細胞分化 / 植物 / WUSCHEL / ESR1 / シグナル分子 |
研究概要 |
根にオーキシンを作用させると、導管隣接内鞘細胞(XPP,Xylem Pole Pericycle)だけが細胞分裂をして側根を形成する。ここでは、XPPのアイデンティティー決定因子を見いだす事を目的とし、XPPで特異的に発現している転写因子遺伝子を数十個、候補遺伝子として選んだ。これらの遺伝子に転写抑制ドメインSRDXを融合させた状態で植物に導入し、内鞘マーカー遺伝子の発現の変化等を指標にしたスクリーニングを行った。その結果、SRDX融合遺伝子を発現させることにより内鞘細胞マーカーの発現を弱め、側根形成を阻害する能力を持つ遺伝子を見いだしている。現在これら遺伝子の多重遺伝子破壊株の作成を進めている。 また、カルス形成時にサイトカイニンで抑制される転写因子をコードする多数の遺伝子を解析し、過剰発現時に子葉を根に転換し、SRDX融合での発現で根をシュート化する遺伝子LBD12/4SL5を見出している。本年度は、SRDX-ASL5融合遺伝子により強く抑制されるAGP30とそのホモログ遺伝子の機能解析を行っている。 また、植物がストレスに応答して成長を自ら抑制する仕組みにも取り組んだ。浸透圧ストレスが、MAP kinaseカスケードを介してSPCHタンパク質の量を減少させ、MMCを消失させる事、また、この減少が、ストレス応答としての細胞増殖の抑制の原因となっている事を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞アイデンティティー決定遺伝子の探索、茎頂分裂組織の機能解析、根とシュートアイデンティティー決定の仕組み、環境に応答した成長制御の仕組み等で、研究の進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
細胞アイデンティティー決定の鍵遺伝子の探索は今後も精力的に行う。細胞アイデンティティーや、根とシュートアイデンティティー決定に関わる鍵遺伝子候補の遺伝子破壊株の解析は必須であるが、冗長性のため、多重破壊株を作る事が必要となり、これには時間がかかる。環境に応答した成長制御の分子機構の研究も発展が期待され、力を入れる。
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