研究概要 |
維管束植物の根系構築の分子機構を明らかにする目的で、モデル植物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を用いた分子遺伝学・生理学的手法により、根の発生・分化に関わる因子の解析を進めた。成果を以下に挙げる。 (1)側根形成開始を制御するオーキシン応答転写因子(ARF7/19)やその標的因子(LBD16/29)を原生木部に接する内鞘細胞列で特異的に発現する植物、およびARF7/19機能誘導型植物を用いた解析から、側根形成における時空間的オーキシン応答の制御機構について新たな知見を得た。(2)LBD16-SRDX発現植物の解析から、LBD16を含む複数のLBD/ASLメンバーが側根形成開始時の内鞘非対称分裂を正に制御することが示された。(3)マイクロアレイ解析で同定したLBD16標的遺伝子候補のうち、側根形成開始部位で特異的に誘導されるLLPL2タンパク質の発現解析および機能解析を進めた。(4)側根メリステムを維持できないfba1-4変異体(プラスチド型Fructose 1,6-bisphosphate aldolase 1[FBA1]の欠損変異体)を用いた接木実験から、根で発現するFBA1が側根メリステム維持に重要なことが示唆された。(5)fwr変異体は小胞輸送で重要な役割を果たすGNOM遺伝子のミスセンス変異により側根形成開始が特異的に阻害される。そこでGNOMを介した側根形成機構を解明するため、側根形成能が回復するfwrのサプレッサー変異体を単離して解析した。(6)側根形成密度が顕著に低下するrlf変異体(cytochrome b5 heme/steroid binding domain proteinの欠損変異体)の根において放射パターンにおける異常が確認された。多重変異体解析を行った結果、RLFはSHR-SCR経路と独立に根の放射パターン制御に関与していることが示唆された。
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