計画研究
特定領域研究
私たちは、これまでに維管束の形成に関わる様々な因子を単離同定してきた。本研究においては、これら因子の生体内での機能と因子間の相互作用を分子レベルで明らかにすることにより、維管束メリステムの機能と形成の制御機構を明らかにすることを目指した。研究は、(1)CLEペプチド細胞間シグナルによる維管束メリステム形成制御、(2)転写因子による維管束分化制御、(3)細胞内の空間制御による維管束パターン制御、の3つの大きなテーマに分けて行われた。その結果、(1)については複数のCLEペプチドを介した維管束メリステム形成にいたる細胞間のシグナル伝達機構と細胞内伝達機構の一端が明らかになった。同時に、同一のペプチドが維管束メリステム形成だけでなく、花芽メリステムの形成にも関与するというメリステムの共通性に関わるしくみが明らかになった。(2)については、後生木部道管形成のマスター遺伝子であるVND6による転写制御機構が明らかになるとともに、維管束分化の初期に関与するbHLH遺伝子のオーキシンを介した制御機構が明らかとなった。(3)については、道管分化における細胞内輸送系と細胞骨格をそれぞれ制御する新規因子が同定された。これらのアプローチにより、維管束メリステムの根幹をなす維管束幹細胞の発生運命が、篩部に由来する細胞間シグナル伝達に始まり、細胞内での受容体カイネース、細胞内キナーゼさらには特異的な転写因子にシグナルが伝達されて制御されるという道筋が明らかとなった。
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