研究概要 |
1.PSK受容体(PSKR1)をモデルとして,細胞内キナーゼ領域のタグ(HaloTag)への置換,およびHaloTagを介したビーズへの固相固定化が,リガンド結合に全く影響を与えないことを確認した.また,細胞内キナーゼ領域のタグへの置換は,タンパク質レベルにおける発現量をかなり向上させる効果があることを見出した.HaloTagを介して受容体細胞外領域をハロゲン化アルキル鎖を持つビーズの表層に高密度で共有結合することにより,共焦点レーザー顕微鏡下で蛍光ラベルしたリガンドを用いてリガンド-受容体相互作用をリアルタイムにモニターすることに成功した.さらに,受容体細胞外領域固定化ビーズを充填した小カラムを用いて,分泌型ペプチドのプールである細胞培養液から対応するリガンド(PSK)を1段階で精製・同定できることを示した.以上から,受容体アレイ作製とリガンドフィッシングのための基本的な技術は確立できた. 2.LRR XIファミリーに属するCLV1は,翻訳後修飾を受けた短鎖ペプチドであるCLV3の受容体と予想されていたが,これまで生化学的な証拠はなかった.CLV1のように細胞増殖を負に制御する受容体分子はしばしば過剰発現が難しいが、キナーゼ領域をタグ置換型として過剰発現することにより,解析に十分な発現株を取得した.[^3H]CLV3を用いた結合アッセイと[^<125>I]光反応性CLV3類縁体によるフォトアフィニティーラベルにより,CLV3ペプチドはCLV1細胞外領域に結合定数17.5nMで直接結合することを見出した.この結果は,CLV3とCLV1がリガンド-受容体ペアとして機能していることを示す決定的な証拠である. 3.シロイヌナズナ細胞培養液中に新しい18アミノ酸硫酸化ペプチドPSY1を同定した.様々な機能解析の結果,PSY1はPSKと酷似した細胞増殖促進活性を示し,2つあるPSK受容体のホモログのひとつがその認識に関わっている可能性が高いことが明らかとなった.
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