計画研究
本研究課題の目的は、イネをモデルに短日植物における花芽形成シグナルの統御機構を分子レベルで明らかにすることである。本研究課題ではこれまでに花芽形成を決定的に制御する分子フロリゲンの実体がHd3a/FTタンパク質であることを明らかにしてきた。すなわちHd3a/FTタンパク質は花成誘導条件下に特異的に葉の維管束篩部伴細胞で合成され、篩管を経由して茎頂まで長距離移動した後、花芽形成を開始させると考えられている。本年度は茎頂に到達した後にHd3aがどのように花芽形成関連遺伝子の発現をスタートさせるのかを明らかにした。これまでの知見から、Hd3a/FTタンパク質は茎頂に到達後、茎頂で発現しているbZIP型転写因子FDと相互作用して花芽形成遺伝子の発現を誘導すると考えられてきた。詳細な生化学的解析の結果、Hd3aとイネOsFD1は直接相互作用しておらず、両者に共通の相互作用タンパク質である14-3-3を間に介在させて複合体を形成していることが分かった。14-3-3はC末端でHd3aと、リン酸化セリン結合部位でOsFD1と、異なる部位で同時に相互作用可能であった。この複合体の形成メカニズムを細胞生物学的に解析したところ、Hd3aは茎頂の細胞に到達後、細胞質に存在する14-3-3に受容され、Hd3a-14-3-3複合体の形で核移行しOsFD1とさらに高次の転写複合体を形成することが明らかとなった。このことから、14-3-3はフロリゲンの細胞内受容体として機能すると考えられる。Hd3aと14-3-3の相互作用の重要性を分子遺伝学的に解析したところ、14-3-3との相互作用はHd3aの機能に必須であることが明らかとなった。これらの結果から、フロリゲンの受容体は14-3-3であり、Hd3a-14-3-3-OsFD1からなる複合体がフロリゲン機能の実体であると考えられる。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Curr.Opin.Plant Biol.
巻: 51 ページ: 58-67
Mol.Gen.Genet.
巻: (In press)