計画研究
本研究の目的はイネをモデルに短日植物における開花統御メカニズムを明らかにすることである。これまでに花成ホルモン(フロリゲン)の正体がHd3a/FTタンパク質であることを明らかにし、さらに14-3-3タンパク質がフロリゲンの細胞内受容体として機能することを示した。そしてフロリゲンの機能の本体がHd3a-14-3-3-OsFD1からなる核内転写複合体Florigen Activation Complex (FAC)であることを示した。これらの成果を受けて、本年度はFACの機能制御機構の解明を目的に研究を行った。Hd3aは葉の篩部伴細胞で発現した後、篩管を経由して茎頂メリステムまで長距離移動し、茎頂でFACを形成して花成を開始させる。FACの直接の転写標的の一つはOsMADS15遺伝子と考えられている。本年度はジーンターゲティング技術によってOsMADS15にインフレームで蛍光タンパク質遺伝子mOrangeをノックインした植物を作成し、こめ植物の茎頂メリステムを花成の全過程を通して詳細に観察した。その結果、OsMDS15-mOrangeは栄養生長期にはほとんど発現が見られないが、花成開始を示す形態的な変化(茎頂の縦伸長及びブラクト形成)が見られるのと同時に茎頂の比較的外縁部において発現することが分かった。フロリゲンの中心的な機能がFACを介した転写制御であったことから、花成の初期段階における全転写産物の発現変動の解明を目指した。花成開始を示す形態的な変化(茎頂の縦伸長及びブラクト形成)を指標にして、栄養生長期及び花成直後の茎頂をサンプリングし、次世代シーケンサーによるRNA-seqを行った。その結果、花成の初期段階にはMADS-box遺伝子及びSPL遺伝子を含む多数の転写因子が発現変動し、同時に転写プロセスを制御するクロマチン制御因子の発現にも変動が見られた。また細胞周期関連遺伝子の中から花成初期に大きく発現が変化するものも見いだすことができた。
1: 当初の計画以上に進展している
フロリゲンの細胞内受容体を同定し、フロリゲンの活性本体となるタンパク質複合体の可視化に成功した。さらにフロリゲンの全標的遺伝子の網羅的解析を開始した。またジーンターゲティングによるフロリゲン機能のレポーター植物を作出できた。これらの成果から、当初の計画を大きく上回って進展しているといえる。
ジーンターゲティングによって開発したフロリゲン機能のレポーター植物を材料にして、花成の開始直後においてフロリゲン活性が時間的、空間的にどのように広がって行くのかを明らかにする。また、高速シーケンサーを用いた大規模な転写産物解析によって、花成の初期過程における遺伝子発現の全体像をとらえる。
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