計画研究
維管束植物の根は,内生・外生の要因に応じた側根形成を通じて根系構造を可塑的に構築する。側根は一次根に沿って一定の間隔で作られるが,その周期性は根端付近における数千遺伝子の発現振動の総体として観測されるRoot clockに相関している。この時間周期が一次根軸に沿って一定の間隔でオーキシン応答極大を形成し,これが予定分岐部位(プレブランチサイト:PBS)へと運命づけられる。根系構造の可塑性は,Root clock の時間振動が根に沿ったPBS の空間周期に変換され,さらにPBS から側根原基が形成される過程に何らかの変調作用が入力されることで生み出される。本研究では,側根新生の長時間広域発光・蛍光イメージング系や変異体・マーカー系統を画像解析,数理モデル解析,人間拡張工学と融合させ,Root clock に依存した側根形成の空間的周期性の制御とその変調機構を明らかにする。2020年度の主な成果を以下に示す。1)根端で周期的に発現変動する発光・蛍光レポーター系統(DR5:LUC/VENUS)を用いた高精度長時間広域イメージングによる観察測定系を確立するため,根の成長を維持しながら観察できる横倒し発光・蛍光顕微鏡を構築した。2)DR5:LUCを用いて可視化された根端オシレーションゾーンのオーキシン応答の振動について半自動化して測定する方法を構築した。3)PBS新生の時空間的周期性や根端のDR5:LUC活性が異常な変異体等を複数系統単離し,PBS密度の高い変異体2系統,およびPBS密度が低下し,側根新生数も低下する変異体1系統の原因遺伝子候補を絞り込んだ。
2: おおむね順調に進展している
2020年度は上記の3)に主に力を注いだ。一方,別の研究項目として,4)根切りによる側根新生の周期性の変調を起動する機構についても,阻害剤およびオーキシン応答変異の関与について解析を行っており,概ね順調に進んでいる。
1)発光・蛍光レポーター系統等を用いた高精度長時間広域イメージングの解析手法をさらに改良する。また、様々な遺伝的背景・生育条件におけるオーキシン応答のオシレーションと側根予定分岐部位の新生との関係性について解析する。2)側根プレパターニングに異常のある変異体や,TOLS2ペプチド応答異常変異体のイメージング解析を進め,側根新生の周期性とその変調機構における原因遺伝子の役割を明らかにする。3)根切りによる側根発生時の発光レポーターの発現をshy2変異体で観測する。障害を受けた根系再構築における側根の時空間周期性について,阻害剤およびホルモノーム,トランスクリプトームによる解析を行い,側根新生と側根成長の促進との相互依存性を検証する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (3件)
Development
巻: 148 ページ: dev196253
10.1242/dev.196253
Plant Physiology
巻: 182 ページ: 1645~1656
10.1104/pp.19.01317
Frontiers in Plant Science
巻: 10 ページ: 1803
10.3389/fpls.2019.01803
New Phytologist
巻: 227 ページ: 200~215
10.1111/nph.16521
http://www.research.kobe-u.ac.jp/fsci-fukaki/fukaki/fukaki_laboratory.html
http://www.edu.kobe-u.ac.jp/fsci-biol/faculty/fukaki.html
https://plant-periodicity.org