研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
19H05674
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
遠藤 求 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80551499)
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研究分担者 |
波間 茜 (久保田茜) 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70835371)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 概日時計 / 周期と変調 / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
これまでにも時計変異体では主根長や側根数が減少することが報告されていたものの、発生における概日時計の詳細な機能の分子レベルでの解析はなされていないままであった。我々は、分化誘導系において、未分化細胞では概日リズムの振動がほとんど見られないこと、分化の初期過程では時計遺伝子LUXが特異的に発現誘導され、細胞運命決定や細胞分裂に関わる遺伝子のプロモーターに直接結合することでこれらの遺伝子発現を協調的に制御していることを既に明らかにしている。また、LUXは分化誘導系だけでなく、生体内においても未分化細胞からの分化過程である根の伸長領域あたりで特異的に発現していることを見出した。 我々は時差ボケ条件においた植物が早咲きを含め避陰反応に似た応答を引き起こすことを明らかにした。さらに、この条件において時計遺伝子は時差ボケの影響を受けていなかった。これは、従来の光周性花成における外的符合モデルとは矛盾する結果であり、概日時計の役割を見直す必要があることが強く示唆された。このような、概日時計が従来の光周性のモデルを超えて花成に影響を与えていることは別の実験系でも明らかとなった。我々は、葉酸の生合成阻害剤であるスルファニルアミドは時計遺伝子LUXの発現上昇を介した花成ホルモンをコードするFT遺伝子の発現を低下させ、遅咲き表現型が引き起こすことを明らかにし、非遺伝子組換えで花成を調節できる可能性を示した。 さらに、周期の「ばらつき」はこれまで個体差と考えられてきたが、我々は地上部における概日リズムのばらつきは、栄養素を介した地上部と根の間の長距離コミュニケーションにより積極的に制御されていることを明らかにした。数理モデルや接ぎ木の結果と併せて、概日リズム制御に器官間フィードバックが存在することを発見し、これが適応度向上に寄与していることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
いくつかの成果については論文として発表済みであるが、現在、再実験中のものが2つ、投稿待ちの論文が1つあり、成果として発表するには至っていない。これらについては引き続き最優先で取り組み、成果発表を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
再実験中の研究のうち1つは再投稿済みであり、残る1つについても概ね順調であり近日中の再投稿が可能である。また、現在、論文執筆の最終段階にあるものについても近日中の投稿を予定している。 その他の、根毛長のリズム解析や光受容体と概日時計の相互作用などの実験については引き続きデータ収集を行い、成果としてまとめていく予定である。
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