研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
19H05675
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
上田 貴志 基礎生物学研究所, 細胞動態研究部門, 教授 (10311333)
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研究分担者 |
近藤 洋平 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 助教 (00724444)
河内 孝之 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (40202056)
金澤 建彦 基礎生物学研究所, 細胞動態研究部門, 助教 (60802783)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | ゼニゴケ / 油体 / 油体周期 / 分泌経路 |
研究実績の概要 |
油体周期仮説では、細胞膜期と油体期が相互に転換することを想定している。細胞膜期と油体期ではトランスクリプトームが転換すると考えられることから、2021年度においても引き続きその実証のための実験を進めた。油体周期の周期長や葉状体内での油体周期の同調の程度についての知見を得るため、油体期に転写されるMpSYP12Bのプロモーターの制御下でPEST配列を連結したELucを発現し、発光を検出した。その結果、発光が周期的に増強と減弱を繰り返す様子が観察されたが、その周期は2周期程度しか持続せず、これが油体周期の本来の性質であるのかどうか疑問が残った。そこで、実験条件を検討したところ、発光を検出するための暗黒条件では、油体形成が停止することが見いだされた。この問題を解決するため、所属研究所の光学解析室の協力を得て間欠照明装置の開発を進め、非撮影時には照明を当てつつ長時間ゼニゴケを培養しながらライブイメージング観察を行うことが可能になった。 これと平行して、細胞膜と油体膜を蛍光タンパク質で可視化した形質転換体を長時間観察することも試みた。前年度の解析により、MpSYP12Bにより油体膜が認識できるようになる約12時間前に油体母細胞が不等分裂し、娘細胞のうちの小さい細胞に油体が形成される様子が観察されていたが、この現象も照明を当てることで長時間観察できるようになることが明らかになった。今後は観察の効率が向上するものと期待される。 油体の形態が異常になる変異体の解析も進めている。油体の形態や分布に異常を示す個体をスクリーニングし、これまでに複数の候補を得ている。そのうちの一つについて詳細な解析を進め、ゴルジ体に局在する被覆複合体の構成因子、MpSEC28の変異が原因で油体形態が異常になっていることを明らかにした。現在この変異体の表現型やMpSEC28の機能のさらなる解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共焦点顕微鏡の不具合のため当初の研究計画よりもバイオイメージング解析に時間を要したが、顕微鏡の修理が完了し上述の通り順調に成果があがっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続きバイオイメージング解析を中心とした油体周期仮説の検証を進めるとともに、単一油体細胞核トランスクリプトーム解析に向けた条件検討、油体形態が異常になる変異体の解析を進める。
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