研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
19H05678
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
望月 敦史 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (10304726)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 数理モデル / ダイナミクス / ネットワーク / 構造理論 / バイオメカニクス |
研究実績の概要 |
本研究では数理的手法を用い、植物形態形成に対して、(1) 生体分子ダイナミクスと、(2) 細胞メカニクスの2つの階層から、周期性を創出するメカニズムとその変調がもたらす効果の解明に迫る。これまでに開発した構造理論を発展させ、(i) 周期的振る舞いが現れるための生体分子相互作用の条件および、周期性やその変調が器官形態にもたらす効果を数理的に決定する。さらに、これらを用いて、(ii) 領域内の実験グループとの共同研究を推進し、植物形態形成でみられる様々な振動現象のメカニズムを予測検証的に解明する。 (1) 2020年度は、生体分子相互作用のネットワーク構造から、振る舞いを決定する数理理論「構造理論」について、二つの方向で研究展開を行った。第一に、力学的な振る舞いの多様性の起源となる「分岐」が生じるための条件を、ネットワーク構造から決定する「構造分岐解析」について、一般化を行い、これまでは定常状態分岐のみに適用可能だったものを、振動的な分岐(Hopf分岐など)にも適用できる形式を導いた。第二に、制御ネットワーク構造だけから、力学的に重要な一部の分子を決定する「リンケージロジック」について、巨大なシステムに対しても高速に鍵分子を決定できるアルゴリズムを開発した。 (2) 2020年度は、細胞内ダイナミクスが形態形成に与える影響を解明するための数理モデルの構築を進めた。特に葉の形態制御に関し、塚谷グループとの共同研究を進め、Vertex Modelを用いたモデリングを行った。また、塚谷グループと理論グループの間でミーティングを複数回行い、CTなどの画像データから結球の条件を決めるための議論を進めた。 また、領域内外での数理的手法の普及を目指して、数理生物学の教科書を執筆した。生物現象を解明するための一般的な数理的手法に加えて、上述の構造理論についても詳細に解説している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和二年度においては、新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していたほとんどの学会や研究会が、中止、もしくはオンライン開催となった。また、2名のポスドクの雇用を予定して人件費・謝金に大きな予算を充てていたが、優秀な人材を得ることが難しかったため、1名の雇用にとどめた。
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今後の研究の推進方策 |
今後については、新型コロナウイルスの感染状況が大きく改善しないうちは、柔軟に状況に対応しながら、計画を進める。また、人が動きにくく、人材が得られにくい状況ではあるが、人的ネットワークを利用して、もう一名のポスドクを確保したい。
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