研究領域 | 超地球生命体を解き明かすポストコッホ機能生態学 |
研究課題/領域番号 |
19H05683
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中井 亮佑 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (90637802)
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研究分担者 |
玉木 秀幸 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (00421842)
草田 裕之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (00827537)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 微生物 / 細菌 / バクテリア / 多様性 / 分離培養 |
研究実績の概要 |
2020年度は、昨年度に引き続き、本領域で設定するモデル圃場や他環境由来の試料を用いて、難培養性微生物(ポストコッホ微生物)の培養化効率に寄与する「培養のコツ」の解明に取り組んだ。具体的には、(1)微細な孔径の精密ろ過膜によるサイズ選別、また(2)生物間相互作用の効果などを検討するために、各種条件で試料を処理した後で、環境細菌を分離培養し、未処理区で分離した細菌株と比較することで、系統学的多様性ならびに新規性の観点からより効果的な培養条件を選定した。その結果、処理区においてBacteroidetes門新規細菌などを見出すなど、現在までに約60株の新規細菌を獲得し、その一部を論文公表した。さらに、A01-1佐々班との共同研究によって、マイクロ培養デバイスの試作機による微生物分離法の評価も継続した。このポストコッホ分離技術をモデル圃場からの微生物探索に応用した結果、土壌中の難培養性細菌群の一つであるAcidobacteria門に属する新規細菌を獲得した。分子系統学的な解析より、本細菌は既知細菌に近縁な細菌がなく、新属新種の候補であると判明した(原核微生物の系統分類に汎用される16S rRNA 遺伝子配列の同一性は約95%)。昨年度にデバイスを活用して単離した新規細菌と同様に、本細菌もまた寒天平板培地ではコロニー形成が遅く、従来法では生育の早い一般細菌が優占するため、その可培養化が困難であった可能性がある。得られた分離株のうち、ゲノム解析や生理性状試験からも系統分類学的な新規性が認められたものを新しいバイオリソースとして国内外の微生物系統保存機関に寄託し、新規系統を提唱する論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微生物の培養化効率に関わる諸条件の検討に加えて、昨年度に確立したマイクロ培養デバイス試作機のプロトコールにもとづき、モデル圃場の土壌などからの微生物探索を予定通りに遂行した。その結果、系統学的に新規な細菌が複数得られ、また論文公表に向けた寄託手続きに着手できたことから、「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
領域内での共同研究により、ポストコッホ技術の一つであるマイクロ培養デバイスの使用方法や改善点について引き続き相互フィードバックを進め、環境細菌の分離培養に効果的なプロトコールを検討する。また、本技術で分離した菌株の保管や継代培養の方法もあわせて検討する計画である。さらに、新技術を介してのみ分離できる細菌の系統や増殖特性に関するデータを拡充するとともに、従来技術で得た菌株データの傾向と比較し、その有効性を評価して体系化する。ただし、新型コロナウイルス感染症に伴う対応で実験期間が限られる場合は、試験項目や検体数を減らすなどの対応を行う。
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